「部下の能力が足りない」ことが前提?

最近、労務管理に関する資料や話を目にしたり耳にしたりする機会が増えました。

それらの情報の中で、まれに、自分と考えが違うなぁ、と思えるものがあります。

 

違和感を感じた例はこんな感じです。

上司が部下に書類作成の頼み事をし、部下の作成物が上司の期待通りに作れていなかった、という場合、

部下が上司に「それならそうと最初から言ってくださいよ~」と反論するのは宜しくない、

なので、反論せず自分に非があることを認め次から気をつけましょう、

といった内容です。

 

この事例そのものは、まさしくこの通りで、心では「最初から言ってよ」と思いつつも、

仕事を受け取る前にあやふやな点は事前に上司に確認し、不平不満を口にすることは宜しくないです。

 

ただ、この事例を見ると、あまりにも部下が自虐的過ぎる印象を受けてしまったのです。

 

実際の現場では、むしろ上司の説明不足が原因で部下がミスしたり立ち往生してしまうことが多く見られます。

上司がこの仕事を「いつまでにどのような方法で終わらせたらいいか」を正しく伝えていないのです。

 

部下のほうも、仕事をする時は事前に上司に確認しろ、と言われても、

気付いた時には上司が外出して不在だったりで確認できず、

かといって勝手に進めていたら間違っていた、ということも多分にあります。

 

ですので、部下向けの社員教育も当然必要なのですが、管理職教育もそれ以上に必要になってきます。

ただ、今知る限りでは、管理職教育がきちんとなされている教育をほとんど知りませんし、

管理職教育を受けているであろう大手企業の管理職を見ても、とても教育が行き届いているようには見えません。

 

この、部下だけに教育を強いる視点はなぜ生まれるのか理解ができなくてずっと考えていたのですが

なんとなくこういうことか、という結論が見出せました。

それは、「社員(部下)は我々(上司)と比べてスキルが足りない。だから上司の指示は100%正しい」といった、

「部下の能力が未熟なゆえの上司正当論」を前提に考えられている、ということです。

 

上司の管理能力を向上させたほうがいい

どの会社でも、仕事のスキルは部下より上司のほうがあるのは当然です。

ただ、どんなにスキルのある上司でも指示や指導が小学生並みに下手な人も大勢います。

俺はスキルがあるから指示も俺の言い方が正しい、と思い込んでいる上司がたくさんいます。

本当は、このような「『部下は能力が未熟だから俺の言うことを素直に聞け』と思っている上司向けの管理職教育」をする必要があるのです。

 

なぜ管理職教育が必要かと言えば、

一つには「上司は部下をしつけることができるが、部下は上司をしつけることができない」という力関係によることと、

上司の管理能力を上げるだけで社内の残業問題や生産性の問題が解決するからです。

 

「上司の管理能力と部下の時短・生産性に何の関係があるの?」と、大半の人が不思議に思うことでしょう。

実際、私のコンサル事例のように、上司の管理能力を向上させた(もしくは会社全体の仕事の流れを整理した)だけで残業時間が大幅に削減できています。

そして、社内がうまく回っていない会社のほとんどが、部下に教育をするよりも、上司の管理能力を向上させたほうが解決しやすいのです。

必要と思われる管理職教育とは?

とはいえ、私の考えを聞いたことがない人は、例えば残業問題がなぜ上司の管理能力と結びつくかわからないかもしれません。

そこで、あなたの会社の管理職に以下のスキルがあるか振り返ってみてください。

・部下が抱えるタスクの作業量(総量)はわかっているか?(=タスクを終えるために必要な時間はどれくらいかわかっているか?)

・部下が今どのタスクを作業しており、進捗状況を把握しているか?

・部下は与えられたタスクの内容を正しく理解しているか?(理解しているかどうかを確認しているか?)

・このタスクを完成させるためには何が必要(要員、人材、道具など)かわかっているか?

・このタスクの完成形はどのようなものになっていなければいけないか?(ハード面、ソフト面)

 

これらのことを理解できている管理職(上司)であれば、社内は円滑に進んでいるはずです。

逆にこれらのことを理解していない管理職(上司)であれば、社内は混乱しているはずです。

混乱している会社は、これらのことができる管理職教育を行う必要があります。

 

最初に出した例のように、上司が的確な指示を出していれば部下が書類を作り直す手間がかからなくて済みます。

「いや、それは部下がわからないことは質問することが大事でしょ。上司はそこまで気を使っていられない。」というご意見には賛同致します。

 

でも、「部下の能力が未熟」論を前提に言えば、部下は「わからないことがわからない」ほど未熟な可能性も十分あります。

そもそも、部下は能力が未熟だからこそ組織の下位にいて許されているのです。

上司以上に部下が気が効いてスキルも高いなら、その部下はその上司より下の地位にいては会社の組織上不都合なのです。

(実際、この矛盾を抱えて社内が回らない企業が日本国内の大多数を占めています)

 

ですので、私は部下に多くを期待しないほうがいいと思っています。

むしろ、能力が高くて昇格した(はずの)上司のケツを叩いたほうがより効果が出ると想像しやすいのではないでしょうか。

未熟な部下からの質問を期待するより、”優秀な(優秀であるはずの)”上司の細やかな指示に期待したほうが経営者の立場で見ても健全に思われますが、あなたはいかがお考えになりましたでしょうか。